なぜ地方議会改革が必要なのか??
いま全国の自治体は大変厳しい財政環境にありますが、新しい時代を切り開こうと様々な改革・取り組みが進んでいます。因みに国と地方合わせて一千兆円の借金があります。
国と地方との関係を見直す地方分権改革、平成の大合併、道州制移行への準備など、「明治維新」「戦後改革」に次ぐ「第３の改革」が進行中であり、これは、私たちの身近にある地方政府を主体に「地域で考え・地域で行う」地域主権型国家への生まれ変わりを意味しています。
この背景には、明治維新以来１４０年におよぶ中央集権体制が、ここに来て、その歴史的使命を果たし限界に達した観があり、強固な官僚制を初め様々な弊害が顕在化し、地域に密着した、市民のための効率的な地方行政が行えなくなっている現状があります。
このため、自治体自身が改革を進めなければなりませんが、課題は山積しています。
大きな問題の１つは地方議会の改革です。自治体の唯一の決定機関である地方議会が機能不全ならば、地方分権改革も上手くいく筈がありません。いずれ道州制が実現しても「基礎自治体は市区町村」であることを肝に銘じておく必要があります。
地域の舵取りを担う地方議会には、市民との関係、首長との関係などを明らかにしながら自治（市民が幸せに暮らせる地域社会を築く）を実現する大きな役割があるのです。
日本の自治制度は、市民・議会・首長の３者が相互に抑制均衡と緊張を保てるよう工夫されたもので、その上で夫々が確りと連係することで望ましい政策が立案されます。
この３者の関係が正しく機能することが重要なポイントです。しかしながら、現実は中々その通りには捗っていません。
例を挙げれば、昨今、議会が安易な妥協によるオール与党的ムードで、権限の強い首長に擦り寄る傾向が目立ち、二元代表制（議員、首長を別々に選挙で選ぶ）の利点が活かされていないのは甚だ残念です。こんなことでは、首長・執行機関の活動を監視・是正するという本来議会が持っている機能が有効に発揮される訳がありません。二元代表制の下では、首長は議会与党の代表者ではないのです。本来、地方議会には与・野党は存在しないことを議員も私たちも理解が不十分であるのかも知れません。
即ち、それまでほとんど認められていなかった自治体の全ての業務についての審議権も条例制定権も認められ、全てが予算審議の対象になり、地方議会は政治の「脇役」から一気に「主役」に躍り出たのです。
それなのに、議員さんが相変わらず地域の世話役・口利き行為や地元への利益誘導に終始していたのでは困ります。もっと政策の立案・審議に時間を割き地方政治の質を高めていくべきです。また、市民への情報公開を徹底した上で、議員個人ではなく組織としての議会報告会を励行し、市民の意見や批判を聴くとともに、議会自らが争点を提起し市民参画を求める役割も期待されています。
地方議会は市民参加の場（※）であり、議員も会派の決定ではなく、議員個人の意思と良心に従って採決し、賛否とその理由を公開すべきです。
※情報の徹底的公開、傍聴席の充実、本会議・委員会の審議の公開、市民が議会で発言できる機会の確保、議会の夜間・休日開催などによる市民と議会との距離短縮、等々。
このように多くの期待を担うべき地方議会の役割を明確にするには、「議会基本条例」（議会の活動理念とともに、審議の活性化や市民参加の具体的な行動基準などを規定したもの）の制定が早道と、今全国の多くの自治体で条例制定作業が加速していますが、あまり市民の声を聞かずに急いで作るのも問題です。何故なら、熱心に取り組んでいるのだという姿勢は分かりますが、不十分・不満足な内容でも、いったん制定した条例を手直しするのは容易なことではないからです。因みに、２００９年６月１８日現在、全国で５９の議会が議会基本条例を制定しています。
我々市民も、お任せ民主主義から脱皮し自らが参画して、議会改革、議会活性化に向け、改革の後押しをする時期が到来しています。即ち、政治を市民の手に取り戻すということで、自分たちの地域は自分たちで守り発展させていこうということです。
繰り返しになるかもしれませんが、地方議会議員の本来の主な役割は、市民の意思を把握し、これを議会における審議・討論を通じて適切な形で地方自治体の運営に反映させることです。一方、首長を初めとする行政側は、あくまでも執行機関である（もちろん、市民ニーズを汲んで予算を提案しますが）という原則を、市民も議員も再認識する必要があります。
議会が変われば（チェンジ）、社会（執行機関や市民を含む）が変わります。
